東京高等裁判所 昭和34年(ラ)594号 決定 1959年9月10日
申立人 江原鶴吉 外一名
主文
本件申立を棄却する。
理由
本件異議申立の要旨は、控訴人(申立人)等と被控訴人高橋京外四名との間の前記控訴事件の判決(申立人等敗訴)は昭和三十四年六月十八日に言渡されたのであるが、同日申立人等代理人は右判決言渡後に前記書記官補に対し判決原本の閲覧を求めたところ、その際判決原本は未だ完成しておらず、右判決は原本にもとずかないで言渡されたものであつて、結局右原本は存在していなかつたため同書記官補は右原本を閲覧させることができなかつたものである。よつて申立人等代理人は同書記官補に対し右の事実に関する証明書の交付を求めたが、同書記官補はこれを拒否した。しかしながら、右書記官補は右証明書を交付すべき法律上の義務を負担するものであり、且この証明書は申立人等が上告審の審理を受けるにつき絶対不可欠の証明資料であつて、同書記官補の右処分は違法であるからこれが取消を求めるというのである。
思うに、訴訟当事者が裁判所書記官(書記官補を含む)に対し訴訟に関する事項の証明書の交付を請求し得ることは民事訴訟法第百五十一条第三項の規定に徴し明である。しかして右訴訟に関する事項とは訴訟法にもとずき執られた処置であつて記録上顕著な事項に当るものを指し(民事訴訟法第四百九十九条、第五百十三条第二項等参照)申立人等主張の証明を求めようとする事情は右事項に当らないものと解するのが相当である。(仮に申立人等においてその主張の証明書の交付を受けたとしてもこの証明書が上告審の審理を受けるにつき絶対不可欠の証明資料となるものとは解されない。)従つて前記書記官補が申立人等の申請を拒否したのは違法ではないから本件異議の申立を理由がないものと認め、主文のとおり決定をする。
(裁判官 梶村敏樹 岡崎隆 堀田繁勝)